【内科】慢性呼吸不全の治療法；在宅酸素療法の紹介 : 世田谷区三軒茶屋の近藤内科クリニック

1.呼吸不全とは
酸素は、身体が摂取したエネルギーを燃やす ために不可欠なものです。肺を通して体の中に酸素を取り入れ、エネルギーを燃やして生じた炭酸ガスを排出する生体 活動が「呼吸」です。呼吸の障害による酸素不足は全身のあらゆる臓器の働きの障害となって現れます。様々な症状を起こしますが、特に労作時の息切れが慢性 の酸素不足の代表的症状と言えます。

呼吸の障害により酸素不足、炭酸ガス過剰になった状態を呼吸不全といい、呼吸不全が１ヶ月以上に及ぶ場合を慢性呼吸不全といいます。慢性呼吸不全の重症度は、労作時の息切れ（呼吸困難感）の程度から判断されるのが一般的です。

下に代表的な分類であるHugh-Jonesの分類をあげます。歩行時の息切れの強さから評価するものですが、II以上の方は慢性呼吸不全の可能性が考えられます。

【慢性呼吸不全の重症度分類（Fletcher-Hugh-Jones改）】
1. 息切れはないかあってもごく軽度である。
2. 平地では同年齢の健康な人といっしょに歩けるが坂道や階段では息切れがある。
3. 人並みの速さでは歩けないが自分の歩調なら1km以上歩ける。
4. 休まなければ50ｍ以上歩けない。
5. 会話または着物の着脱その他身の回りのことをするにも息切れがする。

2.慢性呼吸不全を起こす病気とは

慢性の酸素不足による息切れ；慢性呼吸不全をきたす病気としては、まず様々な肺の病気があげられます。主なものをあげれば、慢性閉塞性肺疾患、肺結核後遺症、間質性肺炎などです。この中で、慢性閉塞性肺疾患には、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症など日常遭遇する事の多い病気が含まれています。また肺疾患以外にも様々な原因があり、慢性心不全など心臓病、脳、神経、筋肉の異常にも慢性呼吸不全を起こす病気があります。

3.在宅酸素療法（HOT）

在 宅酸素療法（以下HOT） とは、一定レベル以上の慢性呼吸不全の患者さんが、病院外の日常で、酸素吸入器を常備し酸素を吸入しながら生活するという治療法です。息切れ/慢性呼吸不 全の患者さんのうち、以下のような疾患の方が対象となりますが、特に下線を引いた疾患は頻度の高い疾患といえます。これらは国民病とも言えるありふれた疾 患ばかりですが、一定以上の低酸素血症があればいずれもHOTの対象となります。

HOTにより、慢性呼吸不全の患者さんの日常生活は大幅に向上します。日常生活の中での呼吸苦が改善するだけでなく、例えば困難だった就業が可能になったり、会合への参加、遠隔への移動（海外旅行など）が可能になる例もあります。

【在宅酸素療法の対象となる疾患とは】
1. 高度慢性呼吸不全（肺気腫、慢性気管支炎、肺結核後遺症、気管支拡張症、肺がん、間質性肺炎、それらの術後など）
2. 肺高血圧症
3. 慢性心不全
4. チアノーゼ型先天性心疾患（ファロー四徴症、大血管転位症、三尖弁閉鎖症、総動脈幹症、単心室症など）

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HOTの導入には、医師の専門的な判断が必要になります。上記心肺疾患の診断だけでなく、心機能や呼吸機能の評価、自覚症状の内容と強さの確認、血液中の酸素分圧、酸素飽和度、無呼吸の有無などが、導入にあたって総合的に考慮されます。

ま た、導入後の酸素投与量、時間などのメニュー決定にも医師の判断が必要となります。従って、医師を介さずにHOT を導入する事はできません。導入の具体的な手続き、使用条件の決定などは、医師の側の指示で行うことになります。一方、患者さん側には、手続き上の煩わし い手間は全く不要で、診察室での診療、医師との相談、指示の確認がすべてです。

HOTは決して特殊な高額の治療法ではなく、保険適応の治 療法で、現在全国で約10万人強の患者さんが利用しています。現在（2010.11月）、1割負担の患者さんの負担額は、1ヶ月約8千円程度です。また、 患者さんは生活スペースに酸素を発生する機械を装備しなければなりませんが、きわめてコンパクトで持ち運べるものも開発されています。上記疾患に該当し、 息切れなどの症状が強くて日常生活に制限の生じている方は、一度在宅酸素療法に取り組んでいる医師に相談される事をお勧めします。

在宅酸素療法に関するご相談は、近藤内科クリニックまで TEL:03-3411-1310