【心療内科】うつ病の診断チャート
うつ病はポピュラーな疾患ですが、その内容は、近年ますます多岐にわたるようになりました。うつといっても、古典的なうつに加えて、比較的軽い「気分変 調性障害(いわゆる軽症うつ)」、新型うつ病、非定型うつ、季節性のうつなど内容は様々です。それらの全部を一つの診断基準で捉えるのは無理があります。
やむをえず、ここでは1. 気分変調性障害(いわゆる軽症うつ)と、2. うつ病の診断基準をあげてみます(いずれもDSM-IV改)。これらに収まらないうつ病も当然ありますが、比較的頻度が高いのはこれらだと思われます。
大雑把にいって、うつ気分の経過は長いが社会生活は送れている方は1、もっと症状が重く数週の持続でも社会生活が困難になった場合は2に該当すると思われます。両者の診断基準を順番にあげますので、A→Bの順番に進んでみてください。自分がうつに該当するかどうか、どのようなタイプなのかが、ある程度わかると思います。
1.
軽症うつ病(気分変調性障害)の診断
正式には「気分変調性障害」といいます。気分のはれない状態が慢性的に(2年以上)続くものです。うつ病が2週間程度の気分変調で診断されるのに対し、
この病気は比較的軽いうつの雰囲気が慢性的に続くものです。本格的なうつ病の助走状態の場合もありますが、そのまま慢性的に経過する場合もあり、単純に軽
症のうつというよりは、通常のうつとは別個の疾患単位として扱われています。近年はこのタイプがふえていると思われますが、本人はうつとは気がつかない場
合もあります。DSM-IVの診断基準をわかりやすく変更表現したものを以下に示します。
<診断チャート>
A. 少なくとも2年間、憂うつでない日よりも憂うつな日の方が多い。
B.1 食欲低下、または過食がある。
B.2 眠りについて、以下のどれかが慢性的に認められる:
・寝付きのわるさ
・夜中の中途覚醒、早朝覚醒
・過眠(朝おきれない)
B.3 身体的疲労感、倦怠感。気力の低下。
B.4 自己評価の低下;自己の能力、魅力、スケールなどの関して、自信がなくなっている。
B.5 集中力の低下、判断力決断力の低下。
B.6 希望がない。
診断:
A に該当しB1 ~ B6 のうち、2つ以上該当するなら気分変調性障害と診断されます。また、上記の診断基準にはありませんが、様々な身体的不調(めまい、胸部不快、消化器症状、頭痛、動悸など種々です)が強い結果、うつと気がつかれずにいる場合もあります。基準で該当しているなら心療内科の医師に一度相談してください。
2.うつ病の診断
こ こではDSM-IV に準拠した基準を示します。うつ病は気分変調障害の場合とは異なり、長い期間を漠然と経過できるものではありません。その点ではより重度の気分の失調で、 数週(2週がめどとされます)で患者さんは強い精神的苦痛と社会生活困難を感じる状態に陥ります。従って軽症うつとは異なり、比較的短期間の気分の状態か ら判断します。2週間程度、以下のくっきりとした症状群がみられればうつ病が疑われます。
<診断チャート>
1. ほぼ1日中続くうつ気分。
2. 1日中また毎日の、すべての活動への興味やよろこびの減退。
3. 著しい体重減少または増加。食欲の減退または亢進。
4. 不眠または過眠(おきれない)。
5. 焦燥感または精神的活動の低下。
6. 疲労感、気力の減退。
7. 自分は価値がないと感じる、過度あるいは不自然な罪責感。
8. 判断力や集中力の減退、それによる決断困難の状態。(物事を判断して先に進んでいけない)
9. 死について繰り返し考える。漠然と自殺を思う、または具体的に自殺を企図する。
診断:
1)以上の項目のうち、項目1、2のうち1つ以上が2週間以上続いている
2)さらに1〜9の全体で計5つ以上の症状が存在している
1)および2)を満たせばうつ病と診断されます。努力や我慢では良くならない病気なので、早めに医師に相談する事が必須です。躊躇せず受診するようにしてください。
なお、上記診断基準に当てはまらなくとも、うつと見なして治療すべきケースがあります。非定型うつ病、うつ病と体の症状との関連に関してはバックナンバーのおのおののコラムを一読ください。